謎すぎる伊勢の「神宮」① 世界遺産にならない理由

今年の上皇退位と天皇即位の一連の行事に伴って伊勢神宮が脚光を浴びる機会が一気に増えた。GWの人出は例年の2倍だったらしい。例年のGWだって結構な人出だったろうにそこから2倍って一体どんなもんだと思ってしまうが空前の皇室ブーム状態だから仕方ないのだろう。
しかしこの伊勢神宮、皇祖神を祀るだけあって歴史はとんでもなく古いのだがいろいろ謎すぎる点が多いので今回はそれらの謎を挙げていきたい。

正式名称は「神宮」
一般的には伊勢神宮と呼ばれているがあれは正式名称ではない。正式にはただ単に「神宮」とだけ呼ばれる。
明治神宮や同じく三種の神器を祀る熱田神宮などとも格が違うということなのだ。(ただここでは紛らわしくなってしまうので今後も伊勢神宮と表記する)
伊勢神宮でお守りを買うと「内宮」「外宮」と書かれていても「伊勢神宮」と書かれてはいない。戦前は全国の神社の上に位置すると定められていたらしいが今でも最高位の「神宮」であることに変わりはないのだろう。
ちなみに初代神武天皇を祀る橿原神宮や怨霊となった崇徳上皇を祀る白峯神宮など、天皇家に関わる神社は神宮とつくものが多い。

唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)
伊勢神宮を象徴するのがその唯一神明造と呼ばれる構造だ。唯一、と名がつくだけのことはあってこの構造が用いられているのはここだけである。
明治政府によって同じ様式が禁じられたためこう呼ばれるようになったがヒノキの素木であるとか柱は礎石を用いない掘っ立てであること、屋根は茅葺きであることなど、条件が決まっている。
ただ今挙げた簡単な条件だけでも、それを建てても長くは維持できないような構造である。柱を掘っ立てにすれば腐るし茅葺きもそのままにしておくことができない。
そしてさらには伊勢にしかない唯一神明造の技術を後世に受け継いていかねばならない。
そのために何が必要か。
答えは簡単だ。

世界遺産にはなりえない常若(とこわか)という思想
常若、読んで字のごとく常に若々しいこと。神々は年を取らない。それ故社殿も常に新しくあらねばならないという思想だ。
そのため伊勢には式年遷宮がある。20年に一度、社殿を新しく造り、神々にお遷りいただく。
20年、それは前の式年遷宮を経験した宮大工たちがまだ現役として次の世代に技術を受け継ぐことができる年数だ。そうやって伊勢はその唯一無二の様式を守ってきた。
そのため伊勢神宮には社殿の隣に古殿地(こでんち)と呼ばれる前の社殿が建っていた、次の社殿の場所となる小さなお社以外何もない土地がある。
少し見えにくいが木の奥に見える空き地のような場所が外宮の古殿地

ただどんなにその構造や様式が古くとも社殿自体は築20年を越えることはない。
万が一世界遺産に登録されてしまったら式年遷宮で解体や新築をするたびに登録や申請をユネスコに行わなければならなくなるらしい。完全に目指す方向が違う。
伊勢は世界遺産となるよりも常若の思想と伝統を守ることを選んだのだ。

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